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誰かに名前を呼ばれたような気がして起き上がると、ベッドに横たわって眠っていた、或いは気絶してしまっていたオールドキングが目を覚ましており、看病をするうちいつのまにかベッドに突っ伏して眠ってしまっていたらしい自分を見下ろしていた。
「おはよう。どうかしたの」 「悪い」 「なにが」 「面倒かけたな」 「なーに言ってんのさ。したいからしてるんだし、あやまんなくていいよ」 オールドキングは、ネクストと呼ばれる巨大な機械を操り戦う傭兵、リンクスである。ミッションを受け出撃した彼は、任務を遂行したものの大怪我を負いながらも、なんとかここ、ORCA旅団本部であるビッグボックスへ戻ってきた。彼は、歩いた場所に血だまりが出来る程の出血をするような重症であったにもかかわらず、自力でネクストの操縦席から出、医務室までやって来た。驚くべきことだ。そして、手術が終わり、一命をとりとめたオールドキングの看病は、に任された。包帯を替えるときのみジュリアスに手伝ってもらい、肌に浮かぶ汗を拭い、そうしているうちに半日が過ぎようとしていた。そして、彼は目覚めた。ちょうど包帯を替えようとしていたところだったのだが、の片手に新しい包帯を見つけたオールドキングは、もう出血は止まっているから替える必要はない、と言ってきた。 「血が止まってたってバイキンがついてるかもしれないでしょ! 傷口から入ってきたらどうするの!」 「どうせまた怪我するんだ。菌のひとつやふたつ」 「そんなもんじゃない! 何千匹といるんだぞ!」 「どうだか」 「ちゃんと治るまでは、依頼うけちゃだめだかんね」 「痛みがひいたら、完治した証拠だろう」 「そんなわけないだろっ! とにかくだめったらだめだ! 古王! 言うこときけ!」 ばん、とベッドの脇に手を叩きつける。古王、とは、彼のリンクス名である「オールドキング」が長くて呼びにくいので、勝手に和訳してつけたあだ名だ。それはさておき、つい怒鳴ってしまったは、オールドキングの目に好戦的な色が表れるのを見、危険を感じた。彼はよく他人を見下すが、見下されるのは嫌っている。今の発言が癇に障ったのだろうか。彼はが身を引こうとするより早く、脇に叩きつけられたの手首を強く掴み、引き寄せる。結果は、手をつく暇もなしに顔面からベッドへ落ちこんだ。 「へぐし!」 「いい度胸だな、」 「ぅいてて……へぇ?」 「俺がお前の命令を素直に聞くと思ったか」 「ん……おもっ……た」 向かうところ敵なしの笑みを浮かべたオールドキング。凄みのある笑顔を間近で見てしまい、返事もしどろもどろになってしまう。両者の間の沈黙は、オールドキングによって破られた。不敵な笑みは愉快そうな笑いにかわり、彼の大きな手がの頭髪をぐしゃぐしゃとかきまわす。これから自分はどうなってしまうのかと緊張していたは、拍子抜けしてふたたびベッドへ突っ伏する。 「百年早い」 「ぐーう」 「調子に乗るなよ、馬鹿」 「……古王がけがしてるとこ見るの、わたしは、やだ」 馬鹿な我儘だということは充分に分かっている。リンクスは、傭兵だ。傭兵が傭兵である以上、怪我を負わないということはない。オールドキングがリンクスである限り、の願いが聞き入れられることはないのである。オールドキングの顔から笑みが失せ、を見下ろす目に真剣さが漂いはじめる。髪の毛をなでまわした手が、今度はの頬をそっとなでる。壊れ物を扱うように、指先が産毛に触れるか触れないかの慎重さで、武骨な指がの頬のうえをすべる。 「言っただろう」 「……」 「俺に命令するのは、百年早い」 「うん」 「怪我したところを見たくない、ってのは、リンクスでいるしかない人間には、叶えられない願いだ」 「……うん」 「」 「ん?」 「俺を……あまり困らせるな」 彼らしくない口調に、の胸は痛む。怪我が治れば、また彼は戦場に向かうのだろう。そしては、これが最後になるかもしれない、という不安と、どうか彼が無事に帰ってきますように、というかすかな希望を共に胸へ抱いて、彼を見送ることになるだろう。帰ってくるかもしれない、帰ってこないかもしれない……戦場は何が起こってもおかしくない。彼のように熟練したリンクスでも、絶対に死なない、ということはありえない。彼の命は、明日にも消えてしまうかもしれないのだ。だから今は、 ただ、傍にいて + 「Project『Minor×Dream』」様へささげます。 企画に参加させていただき、ありがとうございました(^^*) |