輝くんが麦子と二人で出かけた。まあ、いわゆるデートだ。
俺は、置いていかれて不機嫌なララを前に、クッキーを口に放り込んだ。
二人のデートが気に食わないのはわかる。ララは輝くんが好きなのだから。
だが不可解なのは、怒ったまま俺のところに来て、ぎゃあぎゃあと騒ぐララの行動だ。
誰かに不満でもぶつけたかったのか?
なんだか知らないけどさ、こっちの事情も考えて欲しいんだよな、俺としては。
俺がいつでも暇人とでも思ってんのか、ララは。
そう考えていても、結局はそれにつきあってしまうから、
ララに甘いってまわりから言われるんだろうな。
「どうして輝はララを置いていくですか!?」
「そりゃ、麦子とのデートだからだろ」
「デートならララとすればいいのに、どうして麦子ですか!?」
「そりゃ、輝くんが麦子のことを好きだからだろ」
「っ……、どうして輝はララを好きにならないですか!?」
「じゃあ聞くけどさ、どうしてララは俺のことを好きになってくんねーのかな」
つまり、それと一緒だろ。
今まで騒がしかったララの口がぴたりと閉じる。俺はようやく静かになったことにホッとした。
俺、耳が痛くなりそうなんだけど、ララの喉ってどうなってんの?
黙り込んだので、次に何を言うかと少し待ってみたが、
ララは無言のまま俺を見てくるだけで何も言わない。
無言で見詰め合っていたってしょうがない。どうせいつものようにララから返事はこないんだし。
無意識のうちにため息が出て、俺ってば結構疲れてるんじゃないか?
「話はそれで終わりか? なら、俺は出かけるぞ」
「待つです! どうして逃げるですか!?」
「あー、もう。今日のララは『どうして』ばっかだな」
「そ、それは……いえ、今のはが悪いです。ララを置いていこうとするから」
「俺よりか先にララが俺ン家を出ればいい話だろ」
「なっ、違います違います! どうしては空気読めないですか?」
ララには言われたくないけどな。ていうか、お前こそ裏の裏を読んでくれよ。
俺はあえて空気読んでないんだよ。頼むよ。
わかったという意味をこめてソファに深く座りなおせば、ララは安心したのか一旦口を閉じた。
でもまたすぐに、あのマシンガントークが始まる。
「ララは、が麦子を受け入れるのが一番良い思います。そしたら輝はララを見てくれます」
「はあ〜……結局はその話になるのか。いいか、ララ。麦子は俺を恋愛対象として好きじゃない。
そして俺はララが恋愛対象として好きだ。
お前が輝くんを好きなのはわかるが、物事をでっちあげるな」
「いいえ! は空気読めません、だから気がつきません。
麦子、のこと好きです。輝よりも好きです。ララにはわかります」
わかりますっていうか、思い込んでますの間違いだろ。
ララはよく、今の話をする。俺と麦子がくっついて、輝くんとララがくっつけばいいんだ、と。
でも現実は、そんなにうまくいきやしない。
ていうか、ララが言うように麦子が俺のことを好きなら、
俺たちは中学生でありながら複雑な四角関係を形成していることになる。
それはどうよ、おかしいだろ。
今でも十分に複雑だけどな。
「わかった。理解力に乏しいララのために簡潔に説明してやる。麦子→←←←輝くん←←ララ←←俺。
いいか、これが正確な俺たちの関係だ」
「NO! 違います、こうです! →←麦子←輝←←←ララ←。こうです!」
「なんじゃこりゃ。俺の矢印の向きがおかしいぞ。ララにも麦子にもむいてるって、どういうことだ」
「そのままの意味です! 、二股かける気ですか!? 最低です!」
「あ゛っー! もう、お前はどうして輝くんが絡むと頭悪くなるんだよ!?」
「なっ、ララ頭悪い違います! 頭悪いは麦子です! 今すぐ訂正を求めます!」
いや、たしかに麦子の成績は残念だけどな、違うだろ。そうじゃないだろ。
やっべー……なんか、頭痛してきた。
俺は深々とため息をつく。ため息をつくとしあわせが逃げるらしいなあ。
今日の俺は、どれだけしあわせが逃げたことやら。
でも、あれか。
何度告白したって絶対に返事はくれないくせに、
俺がララのことを好きだっつー事実は、認めてくれてるわけね。
いつも、自然に流されているから、なかったことにされてるのかと思ってた。うん、そうか、そっか。
「…? 何笑っているですか?」
「ちょっと嬉しいことがあってさ」
「は? 今はララと二人ですよ、なんで一人で笑うですか? 今すぐララにも教えるです!」
別に言葉にしてもいいけど、言ったらすぐにここから逃げ出されそうだから、言わないでおく。
さっきの言葉が意識的なのか無意識なのか、俺には知る術がないけれど、
まあ、とりあえず嬉しいから、それでいいや。
俺の成就しそうもない片思いは、いつまで続くかわからない。
ララが簡単に輝くんを諦めるとは思えないし、輝くんが麦子を諦めるなんて思えないし、
当然俺がララを諦めるなんてことも、考えられない。
「、独り占めはずるいです! 話すですよ!」
俺に、ララのあの真っ直ぐな愛は注がれることはないのかもしれないと、最近思う。
でも、こうしてララと一緒に過ごせる今だけは、俺は十分に満たされているのだ。
「ダメ。俺だけの、秘密だから」
俺はこれ以上ないってほど、ララに心底惚れているんだ。
君
が
隣
に
い
る
し
あ
わ
せ
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